エンジニア個人はどうする?日本の技術力低下から復活するために
日本の科学技術はかつて世界をリードしてきましたが、現在はその地位を失いつつあります。
この状況を打破するためには、単に政府や大手企業の打ち手を待つだけではスピード感が足りません。エンジニア(技術者)個々人の意識改革が不可欠です。
本記事では日本の科学技術復活に足りないことを体系的にまとめた後、エンジニア個人が今日からやるべきことについて1案を示します。
筆者は20年間エンジニアとして大企業と中小企業の両方で半分ずつ働いており、現場とマネージャも両方経験しています。
若手の頃に小さな企業で数年間ベンチャー精神を味わったこともあり、4つの企業での仕事を経験しています。
今、エンジニア個人に求められていること
働き方改善への取り組みにより労働環境は劇的に改善しました。
今、私を含む日本のエンジニア達は技術力低下を恐れ始めています。
企業に解決してほしいこと「科学技術力の低下」が2位、働き方改善上回る。日本の経済安保に不安増か
国際競争力を持ったスピード感のある技術開発を行うには、経営層と技術者両方のベクトル(方向性)を合わせる必要があります。
企業からは、エンジニア個人に下記のような姿勢を求めています。
- 自信の探求モチベーションのベクトル(方向性)を経営層にオープンにし、創造性を発揮する
- リスクを恐れず、自らのアイデアを積極的に発信し、挑戦する
- 国際的な視野を持ち、多様な文化や考え方を受け入れる
ビジネスはますます多様化しており、エンジニア1人で完結出来るビジネスは無いと思っても良いです。
また、人材不足もあり日本人だけで出来ない仕事も増えています。
企業文化が整っていないとエンジニア達は思い切った活動ができませんので、どうすればエンジニアに活躍してもらえるか悩んでいる企業も多いです。
筆者は企業にも頑張って欲しいと思う一方、エンジニア個人個人の意識が変われば、日本の科学技術の世界的立場は徐々に変わっていくと考えています。
以降、本記事では日本の技術力低下を改善する方向性をいくつか解説し、最後に結論で「エンジニア個人が今日からやるべきこと」について記載していきます。
日本の技術力低下を改善する方法
魅力的な商品開発
日本は高度な技術力や品質を重視していますが、柔軟性や創造性に欠けています。現代の技術大国は、これらの要素を重視しています。例えば、AmazonやApple、Teslaなどは柔軟性と創造性を持ち、急成長を遂げています。
新しい技術をビジネスに結びつける能力は日本のほうが優れている
実は、日本は多くの技術で世界に先んじて市場に製品を投入し続けています。
例えば私の技術分野ですとワイヤレス給電や5G等の通信技術、AI、顔認証など。
それが数年~10年後の普及期には世界に遅れを取っている状態になっています。
技術の普及期に世界に遅れを取る理由
理由として、以下の要因が極めて強いです。
- 技術者が技術開発の際にビジネスをスケールさせる事をセットで考えない
- 部署が縦割りでマーケティングや経営戦略との一体感が皆無
- 年度制が強すぎて初期段階から一年単位で採算性を求められるため、すぐに小手先の技術開発をさせられる
- 普及期に入る前に、技術部隊が解体されて必要になった頃に技術が継承されていない
日本で普及がうまく行った技術開発の良くあるエピソードが「会社にナイショで進めていた」「上司に辞めろと言われたが裏で続けていた」だったりします。
総じて、様々な職能が一体となって一つのビジネスを考え抜くというプロセスを実現出来ている企業が日本にはとても少ないです。
研究開発(R&D)の手続きや評価制度改善
バブル崩壊以降、日本の民間企業は研究開発に消極的です。
一方で、国際市場で成功している企業はスタートアップとの提携や買収を通じて競争力を拡大しています。
日本の大企業は外部とコラボレーションするのにハードルが高く、新興技術や産業に迅速に対応する能力が低下しています。
ファンド関連の手続き簡素化
研究開発には研究予算として外部ファンドの獲得が欠かせません。
この外部ファンドのバリエーションの少なさ、手続き、評価制度などが日本は非常に遅れています。
理想的にはファンドは論文の閲覧数や受賞回数などの結果で評価した方が良いのですが、現実には物を買う際にも研究に役立つ物ではなく一番安い方物しか買えなかったりと、研究以外の事で日々頭を悩ませてきます。
国が出す人件費に上限をつけて満足に人を雇えなくしたり、20万円の物買うだけで膨大な手続きがあったり、度重なる有識者会議の準備があったりで、ただでさえ人手不足の研究マネージャクラスの人件費は約60%が庶務作業で消えてます。
産学連携の強化
日本の大学と産業界は、より密接に連携する必要があります。
一部の大学では産学連携が活発化しており良い傾向ですが、大学教員の半分以上が企業と何の連携もしておらず閉じこもっている大学も珍しくありません。
産学連携を強化することで、新たな技術やイノベーションが生まれやすくなります。
また、研究者は研究プロジェクトが終わったら自身の研究を続けるために大学や企業を移転する事も多いのですが、日本は移転先候補が非常に少ないです。
連携を増やすことで人材の流動性も活発化します。
起業・人材育成環境の改善
スタートアップの支援や優秀な人材の育成は、技術革新力を強化する上で欠かせない要素です。
少しずつ改善しつつありますが、日本はスタートアップへの投資に消極的であり、他国と比べてユニコーン企業の数が極めて少ないです。
ジョブ型の普及
事務職と同じ給与の技術職で世界から優秀な人が来るはずがありません。
技術者はワクワクするような業界の先駆者がいれば勝手に優秀な人が集まってきます。
ジョブ型の仕事を拡充し、業界の先駆者には適切な報酬が必要です。
グローバルな視点と競争力の向上
現代において日本の企業は国際市場での競争に直面しています。
外国人研究者やエンジニアを積極的に受け入れ、多様な視点を取り入れることが重要になっています。
資金や技術人材はグローバルで比較されるため、日本円の価値が下がると技術開発はストレートにやりづらくなります。
現状維持なら1人当たりGDPが先進国最低になる―内閣府試算
現状維持なら先進国最低に 60年の1人当たりGDP―内閣府試算
2060年には1人当たりGDPが先進国最低になるという試算が出ています。
先進国最低でも良いじゃないみたいな意見も目立ちますが、最低になるとどうなるか?
すぐに想像出来るのは、以下のような結末です。
- 多くの製品が外国頼みになって電気製品などが買えなくなる。買えても高すぎる
- 作業者の職しか無くなる→優秀な人は日本からさらに減る
- 国際制度の策定へ影響力が出せなくなり、海外の制度変更に従う以外の選択肢しか無くなる→日本人の好きな制度の現状維持が難しい場面が増える
- 国際的に見て日本の経済的重要性が減り、日本を防衛する重要性も減る
現在の生活は過去の遺産で生活水準が決まっています。
国際競争力や資金力が落ちていくという事は、長期的に見ると生活水準は下がっていく方向です。
英語力の向上
若い世代で点数が下がっているのはとても気になります。これからの時代に英語が今まで以上に役立つ事は明らかなのですが。
英語が必要無いと言っている人もいますが、給与の高いクリエイティブな業種については、自動翻訳に頼って英語ネイティブの国に追いつけるはずがありません。
英語が自動翻訳で済むような定型業務に就くなら、それはもう発展途上国の庶民層となにも変わらない生活です。
リスクを取る文化の醸成
イノベーションはリスクを伴います。日本の文化は慎重で安定志向ですが、新たな技術やビジネスを追求するためには、リスクを取る姿勢が必要です。起業家精神を育て、失敗を恐れずに挑戦できる環境を整えましょう。
英紙が日本を分析した下記記事があります。
令和の日本は「バブルの豊かさ」を取り戻せない株価最高値を更新しても | 英紙が1989年との違いを徹底検証
株価を取り戻しても、バブル期のような強気の日本は戻ってこない、という記事です。
日本人の感覚もこの記事の通りと思います。
日本で楽観論を唱える人は少なく、「自国の状況は今後よくなる」と答えた日本人の若者の割合は13.9%と他国に比べて圧倒的に低いとのこと。
現実には海外に比べると日本は医療・食事・水・インフラと非常に恵まれています。ネガティブになる要素が多いとは言えません。
成長には国民のプラス思考と情熱が欠かせないと思います。
結論:エンジニア個人が今日からやるべきこと
本記事では日本の技術力低下を改善する方向性をいくつか解説しました。
「国がどうにかしてくれないと始まらない」と思っていては、永遠に状況は改善しません。
経済は国や経営層と国民(エンジニア個人)の原動力のベクトルが近くなることで、初めて回ります。
エンジニア個人としては、1案として下記4つに取り組む事を提案して、この記事を終わります。
読んで頂き、ありがとうございますm(_ _)m
1.英語に触れる機会を増やす
世界のほとんどの情報は英語がベースです。
日本語に訳されているのを待っていたり翻訳ソフトに頼っていては情報のインプットは遅くなりますし、オンラインでも交流できるからこそリアルの交流は特別視され続けます。
私は、「英語を習得する」という概念は日本人特有の物だと思っています。
言語は学習が終わるということが無いです。母国語であっても話し方を学び続ける人は多いです。
逆に言語を使い始めて良い最低レベルという物もありません。学んだその日から使えば良いのです。
英会話レッスンは必ずしも受ける必要はありませんが、受けないと不安という人はBizmatesがオススメです。
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2.海外動向をチェックする
世界で何が起こっているのか、日本語のニュースサイトで良いので興味を持ちましょう。
個人的にはNewspicksがオススメです。
有料会員でなくともある程度ニュースは読めますし、様々な国際情勢のニュースも取り上げられます。
何より有識者達のコメントを見る事が出来ます。Yahoo!ニュース等よりも生産的かつ専門的なコメントが多いので、ニュースに対するコメント欄の考察で学ぶ事も多いです。
3.上流工程を意識する
今やっているエンジニアの仕事がどのように発生しているか、考えた事がありますか?
上司から仕事が発生しているわけではありません。上司はさらに上の上司や社外から仕事を取ってきています。
仕事の発生源を辿っていくと、多くの仕事や予算の流れは国家の技術戦略や国際標準化動向から発生している事がわかります。
私がいる情報通信分野では、総務省やWRC(世界無線総会)等です。
これを上流工程の存在を意識すると、次にどんな分野が流行って何の技術が必要とされるか、情報が入ります。
そこに自身が近づいていくかどうかは自由ですが、基本的に企業の給与は上流工程の方が高いという事も理解しておきましょう。
(国家公務員は給与の決まり方が異なるので例外)
4.他社エンジニアと交流する
自分に近い業界のエンジニアがどのような仕事をしているかを知るために、定期的に交流しましょう。
交流の場としては学会や展示会、特定の話題で集まるコミュニティなどがあります。
特定の話題で集まるコミュニティは、例えばConnpassなどで日頃から数多く開催されています。
このような交流の場でアウトプットの場を作るとさらに良いです。
自分が今いる業界や近い業界でどのような立ち位置にいるのか、常に意識する事が重要です。
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この記事を書いた人 Wrote this article
kenshi2009
大企業と中小企業🏢で半分ずつ働いている40代の現役エンジニア🔧💻 この変わったキャリアで誰かの役に立ちそうなことを発信します。電気通信分野で量産開発と研究開発、ハードウェアとソフトウェア、プレイヤーとマネージャー、全て練り歩いてきました。ブログ歴も23年、奈良好き🦌 Twitterにほぼ毎日います!【SNS一覧:https://lit.link/kenshi2009】