【体験談】大企業はぬるい?楽すぎる?転職前に把握すべき中小企業との違いと企業規模の選び方
- 大手から発注をもらったけど、大企業の人は仕様も決めず自分で何もやらない!
- 大企業で働いていてワークライフバランスは良いけど、楽しすぎかも?このまま勤め続けられるのか不安💦
大企業について、こんな話を良く聞きませんか?
いわゆる日本的な大企業の環境は本当にぬるいのか?
筆者は20年間エンジニアとして大企業と中小企業の両方で半分ずつ働いており、現場とマネージャも両方経験しています。
若手の頃に小さな企業で数年間ベンチャー精神を味わったこともあり、4つの企業での仕事を経験しています。
そんな筆者が実際の所どうなのかを徹底比較します。
結論から言うと、ぬるい面もあるし、厳しい面もあります。
社会で果たすべき役割が違うので、求められる厳しさが異なります。
下記のような人に是非読んで頂きたいです。
- 大企業に居続ける事に疑問や不安を感じている人
- 大企業から他社へ転職を考えている人
- 大企業への転職を狙っている人
変化の時代、転職という選択肢が日本でも一般的になってきました。一方で転職はリスクが大きい行動なので、長期的な目線で情報を集めて自分が社会で果たしている役割を把握しておく事が重要です。
大企業と中小企業の違い
意思決定階層(部署階層)
最も違うのは意思決定階層です。業種に関係無く、1人の人間(所属長)が直接的に業務を見れる人数はだいたい決まっており、最大でも20人以下程度です。企業に所属する人数が多くなると部署階層が増えます。
大企業になり部署階層が増えると、決裁のスピードが遅くなり、意思決定スピードが遅くなります。また、各部署の役割が複雑になり不透明となります。
各部署の役割が不透明になると、各個人が部署の方向性に疑問を感じたり、自分が努力すべき方向性を見失いやすくなります。
大企業が入念に企業理念を浸透させようとするのは、このためですね。
大企業は意思決定が遅くなる一方で、大部分で状況把握や対策が無難に行われ、現場が経営層の危機を感じ取る事は難しいです。
中小企業は意思決定が迅速で柔軟ですが、時には不確実で経営層ですら対策方法がわからない状況に現場レベルが直面することもあります。
事業規模(プロジェクト規模)
大企業では中小企業よりプロジェクト規模が大きくなり、1つのプロジェクトで使える金額の桁が違ってきます。プロジェクト数は部署や社員の数よりも、管理部門の効率観点から決まるイメージになります。ですので、1つのプロジェクト当たりの金額や人数は大手企業の方が大規模になる傾向になります。
なお、個人のパソコンやデスク環境などに使える予算額は大企業や中小企業での差はあまり無く、企業の景気や人材への考え方で変わってきます。
大企業がぬるいと感じること5点
事業としての責任レベル
大企業は部署階層が多いので、1つ上の階層でも責任レベルは大したことが無いです。部署が存在する意義を上司に示せれば収支はあまり問われない立場の人も多いです。
そのため、大企業は下記のような人がたくさんいます。これが大企業がぬるい、楽すぎると感じる一番大きな要因だと思っています。
- 外注先の人に全てやってもらい、延々とメールのキャッチボール状況を報告する人(常に相手待ち)
- 調整や庶務しかしていない人
- 誰かの成果に乗っかるために社内をずっと監視している人
- そもそも、仕事すらしていない人
こうした現状を放置すると感覚がマヒし、自分でお金を稼ぐ力がつかないことになります。中小企業では人数が少なく、こういった人がいるとすぐに会社が潰れるので比較的すぐに何らかの対策が打たれます。
社外での振る舞い
大企業の社員は発注者(お金を出す側)であることが多く、社外や学会で多少雑な対応をしても許されることが多いです。企業ブランドによって、内容が酷くても社員の発言が凄く見える効果もあります。
他人の成果を自分の成果にできる
プロジェクト単位が大きいと、社内の他の人や外注でやったことを1階層上の上司に報告していると、ある程度それを自分の成果にできます。実際、外注スキルと報告スキルだけで生きている人も非常に多く、こういったスキルも非常に大きなプロジェクトを回すには重要なスキルではあります。
ただ、中には階層の狭間に甘えて実質何もしない人が発生します。また、大きすぎるプロジェクトだと「誰かがやってくれるだろう」「あの人の仕事が成果出たら一緒にやっていることにしよう」と受け身の仕事になりがちな傾向もあります。
中小企業の場合は、働かないと基本的にすぐに目立ちますし、業績にも大きく影響します。働かない人もゼロではありませんが、何もしていない人の割合は中小企業の方が少ないです。
学習環境
大企業が従業員に新しいことを学習させる際、社内研修や外部講師には大きなお金をかけるので自腹でセミナー等に参加しなくても大抵やっていけます。もちろん、参加するには自分で勉強時間を作る必要はあります。
裏を返すと、技術トレンドを自分で掴みに行くモチベーションが薄れ、会社が勧めてきたトレンドに沿った研修を受けるだけの人が増えがちです。
給与が安定
ボーナス査定単位が事業部や子会社単位で、変動幅も小さいため、部長以上でなければ自分個人の仕事結果が反映されたと感じることはまず無いと思います。部長以上であっても収支は事業単位で判断となる事が多く、数百人規模の成績を総合した平均が等しく分配されます。
大企業では役員クラスでも個人の責任を問われて降格、大幅減給、解雇となる事はほぼ無いです。そもそも、個人に明確な責任が行かないような曖昧な方針発表をしている会社も少なくありません。
中小企業の場合は事業部長、役員1人当たりの責任は非常に重く、方向性を間違えると部署がピンチになる速度が速い場合が多いです。
大企業が厳しいと感じること5点
社会の規範になる必要があり、表向きが重視される
表向きには、大企業は下記のような状態になっていなければいけません。社会の規範になっていないと、国や産業界を変えるような大きなプロジェクトが取れないからです。
- 表向きは日本で最上位レベルの仕事をしている
- 表向きは福利厚生が良いホワイトな会社
- 表向きは平均給与が良い
また株式会社である以上、大企業は多くの株主から信頼を得る必要があります。その観点からも、会社の業績が上下しようが外からは安定した経営に見せ続ける必要があるのです。
本当に業績が良い場合は、表向きにも内部から見ても、とても良い会社になれます。実際、今もそういう大企業はあります。
会社の業績が良くない時期は、内部にいる従業員から見ると色々な無理が生じてきます。
具体例を交えて説明します。
表向きは日本で最上位レベルの仕事をしている必要がある
実態がどうであろうと高い技術力を持っていると主張しなくてはいけません。結果、実力に見合わなくても外注やブラックな労働でハリボテを作らなくてはいけない事も多いです。無理矢理差別化ポイントを作るので、それにより開発ストーリーも捻じ曲がっていく場合があります。
こういった現状とのギャップに耐えられず、体調を壊したり精神的に参ってしまう人も多いです。
表向きは福利厚生が良い会社である必要がある
外からの見た目を気にしているため、凄そうに見えるが使えない、外に説明するための福利厚生が量産されていきます。制度はあるが使われていない物が増え、事務費用が膨らんでいきます。
外から見た給与を高く見せるため、業績が悪くなると本当に使える福利厚生(住宅補助など)は外から見た年収から見えないので消えていきます。
表向きは平均給与が良いホワイトな会社である必要がある
給与が悪い人を作らないため、急激な給与カーブは作りづらいです。
ある程度の残業をする前提で所望の給料がもらえる給与体系となっている場合が多く、実質残業代込みの年俸制となってしまいます。
このため、決まった時間まで会社で残業するよう仕事をコントロールする人は未だに少なくないです。
残業規制なども設定されますがだいたい抜け道があるので、大企業でもホワイトでない働き方をしている人が一定数いるというのが一般的です。
結果的に賃金最低値を高くするためにこういった状態が続き、会社は人への新たな投資ができなくなっていると感じます。
異動や転籍のリスク
社内政治によって部署が消滅したり別会社へ転籍になることは珍しくありません。部署異動に伴い、引っ越しや単身赴任になる場合も多々あります。
やりたいことを上司に素直に言う前に、その発言がどういう部署異動になり得るか考えないと人生のリスクになります。独特な嗅覚で異動や転籍を避け続ける運も必要になってきます。
結局、個人の裁量を大きく超えた会社の決断により部署異動や子会社への転籍等が発生し、ある日突然大企業のメリットが強制的に無くなるリスクがあります。これは、長期的に見ると個人の人生における非常に大きなリスクになっています。
中小企業でもこういった部署異動はありますが、場所が限定的であったり、事業の状況などである程度予測できたりすることも多いです。
新しいことを始めるハードルが極めて高い
これは企業によって結構異なるのであくまで傾向ですが、新しい分野に手を出す際、大企業ではとても巨大な事業ストーリーを作る必要があります。スモールスタートができない大企業は多いです。
大抵、新しいことを始めるより社内や外注で結果を持ってきた方が速く評価されるので、誰も新しいことを始めようとしない風土になります。さらに、新しく無く、前例があることに参入してキャッチアップするものしか承認されない傾向も良く見られます。
管理社会
イレギュラーな事をして問題が起きると再発防止取り組みを求められます。社内システムは、こういった再発防止策や多数の部署全ての要件に対応するため記入欄やステップが膨れ上がっていることが多いです。各種申請において何のことかわからない記入欄も全て埋める無駄なノウハウが必要になります。
よって、失敗が許されない風潮となり、一度社内政治に問題を起こすと、永遠に出世コースから外れることになります。大抵の場合は表向きには何も言われませんが、出世はできません。
中小企業では1度問題が起きても、母数が少なければ同様の問題が起きる確率も低く、再発防止策のコストと見合わなければ対策を実施しないという判断が出来ます。
個性が無くなる
大企業では誰でも出来る仕事にすることが求められます。個人スキルで解決しても、他の人が出来ない事だと逆に怒られることさえあります。問題を未然に防ぐ事よりもトラブルシュートする事が評価されます。
また、大きなプロジェクトで受け身の仕事をやり続けると、自分は何が得意だったのかわからなくなってきます。
こうして個性を失うと、転職する際に、企業ブランドが無くなる影響が大きくなります。企業ブランド無しで自分に何ができるか、常に考える必要があります。
しかも、「社内で」個性無く何でもこなせるようになっているだけで、社外から見ると特定の会社でしか通用しない偏った人材に見え、社外ではマイナスに働くパターンが多く泥沼です。
大企業と中小企業、どちらを選ぶべきか?
大企業と中小企業、確率で考えるとスッキリする
色々ネガティブに見える事も書きましたが、大企業は厳しい時もあるけど、会社の体制が大きいのでぬるい時もある、という事かなと思っています。
大きな会社ほど超楽な職場が一定数発生しているのは事実だと思います。
つまり結局の所、大企業と中小企業の違いは職場数の規模です。この記事で書いた大企業のぬるいポイントは、中小企業でも小さい規模で起きている事だと思います。
逆に、大企業には中小企業以上に厳しい職場もたくさんあります。規模が大きいので、ぬるい方にも厳しい方にも広がりが大きいイメージです。
図に表すと下記のような感じです。
大企業は、一部の超厳しい職場が全体を支えている構図というイメージが近いと思います。
大抵の場合、超厳しい職場より超ぬるい職場の方が悪目立ちしてウワサになるので、大企業はぬるい、楽というイメージが定着します。
平均で言えば、大企業の方がちょっとぬるい(上のグラフで、山の頂点がちょっと左)と感じますが、職場ガチャによって中小企業には無いような厳しい職場に放り込まれる可能性もあります。
その点、中小企業は全貌がわかっているので、逆に想定からのブレは少ないと感じます。
大企業と中小企業のどちらが良いかと言われると、ぬるさ or 厳しさよりも、この記事で書いたような社会的責任の大きさ、社会の規範となることに意義を感じるかで決めると良いと思います。
20代の人
とは言っても、20代で社会的責任を考えて大企業を選ぶような人はまずいないでしょう。20代の間はシンプルに何をしたいかで企業を選び、5年程度は頑張ってもう一度、どうしたいか考えるのが良いです。
今の時代、30代で大企業へ転職する事は十分可能です。新卒時点で「この会社が楽そうだから定年まで勤める!」という目的で会社を選ぶのは、リスクでしかありません。
理由は、ぬるい、楽という理由で選ぶと自分が制御できない会社側の理由でそれが無くなるリスクがあるためです。20代の人が60代になる、40年後の世界を予測できる人は誰もいません。
30代、40代、50代以降の人
「そんな事言われても、私達が入社した時はそんな時代じゃなかった!」と思っている方が多いかもしれません。私も、そうでした。
そうは言っても、時代は変わってしまいました。ただ今の時代は、学び直しが楽になりました。業界のプロが無料の学習コンテンツを公開してくれている時代です。
学び続けておくのが大事
やろうと思えば何でも始められる時代では、熟考してから大きく行動するより、少し手を出して体験してから考える方が効率が良いです。自分の強みが無いのなら、尚更早く行動してスキルの種を多く持っておくべきです。
既に強みがあるのなら、自分のスキルをどの方向へ育てていくか、長期的なプランを考えながら強みを磨き続けておきましょう。
長期的な目線で強みを育て続けておけば、会社の組織再編で自分のスキルを捨てるような選択を迫られた時、自分で納得の行く選択をできる可能性が高まります。
自分で学習する方法
現代の学習方法は色々ありますが、手軽に始める場合、下記のようなタイプに分けられると思います。
- 書籍:Amazon(専門書で検索)などネット書店のお陰であらゆる専門書がすぐに買える
- 無料Web:基礎的な内容ならYoutube動画でほとんどの業界をカバーできる
- 有料Web:Udemy等の動画視聴タイプや、Tech Camp等の集中講座タイプがある
1つの例ですが、私は下記のような使い分けをしています。
・全く知らない分野はYoutubeでキーワードやトレンドを知る
・詳しく勉強する時はYoutubeで得たキーワード等でAmazon(専門書で検索)で書籍を探す
⇒文字が好きな人なら書籍、動画が好きならUdemy等の有料Webで、好みで選ぶ
まとめ:ぬるいを理由に選ばない。学び続ける。
今回の記事では大企業はぬるいのか?という観点から、学び続けることの重要性を書かせて頂きました。
ぬるい職場は大企業にも中小企業にも一定数ありますが、40年もぬるいことが約束された職場は絶対にありません。
突然放り出されるリスクを考えると、少しずつで良いので無理なく学び続けるのが良いですよ、というお話でした。
とても長い文章になってしまいましたが、最後まで読んで頂いてありがとうございましたm(_ _)m
おわり。
エンジニアの仕事に特化した大企業と中小企業の違いについても下記に詳しく記載しています!
大企業の転職事情については下記の記事に詳しく書いてありますので、そちらも是非お読みください!
この記事が気に入ったら
フォローをお願いします!
この記事を書いた人 Wrote this article
kenshi2009
大企業と中小企業🏢で半分ずつ働いている40代の現役エンジニア🔧💻 この変わったキャリアで誰かの役に立ちそうなことを発信します。電気通信分野で量産開発と研究開発、ハードウェアとソフトウェア、プレイヤーとマネージャー、全て練り歩いてきました。ブログ歴も23年、奈良好き🦌 Twitterにほぼ毎日います!【SNS一覧:https://lit.link/kenshi2009】