【体験談】大企業から転職して3年後の心境。新たなキャリアの道は?
はじめに:転職から3年が経過
個人の経験や転職先の環境によって異なりますが、一般的には転職後3年程度で自らのパフォーマンスを転職先の職場で最大限に発揮でき、転職前後でのキャリアの変化を総括する事が出来るようになる事が多いです。
転職してからの3年間は私にとって大きな変化と成長の連続でした。この記事では、転職後3年間の心境の変化や得られた教訓について詳しくお伝えします。
筆者は20年間エンジニアとして大企業と中小企業の両方で半分ずつ働いており、現場とマネージャも両方経験しています。
若手の頃に小さな企業で数年間ベンチャー精神を味わったこともあり、4つの企業での仕事を経験しています。
筆者はどんな転職をしたのか?
私は大手企業の電気通信エンジニアから、2021年に転職しました。その理由や転職活動については下記記事に細かく書いてあるので、是非ご覧ください!
転職してすぐにわかる庶務的な業務の違いなどは下記の記事でまとめています。
本記事は3年経って感じたキャリアという観点で長期的な変化をまとめています。
結論:転職はして良かったと思えている
転職は大きな決断でしたが、3年経った今、その選択が間違っていなかったと自分の中では確信して前に進んでいます。
転職時から3年もがいた結果、自分のキャリアを自分で切り開いていくための道筋を見つける事が出来ました。
転職前は社内の部署異動や転職など4つの道を真剣に考えて選択しましたが、当然ながら転職や独立起業などの道は自然に用意された訳ではなく、自分で作った道です。
仕事や人生の節目において岐路に立たされた時は、与えられた道だけでなく自分の可能性を客観的に整理し、自らのモチベーションとリスクを比較して決断する必要があります。
転職して良かったこと
自分のキャリアを自分で選択し、納得感のある選択を出来た事が転職による最大の収穫です。
言い換えると、成長のためのモチベーションを高める事が出来たという点が最も良かったです。
以下、良かった点を詳細に記載していきます。
新しいスキルの習得
転職前後の業界は比較的近かったですが、ハードウェア→ソフトウェアへの転向でした。全体的に見ると必要とされるスキルは全く違いますが、私の場合は業界知識とシミュレーションをベースとした数値解析理論を強みの軸として転職しました。
転職前に2カ月ほど、1日5~6時間勉強してから新しい職場に臨みましたが、転職後3年経った今も学ばなければいけない事だらけです。
思考がより楽観的になった
新しい環境に必死に適応した経験により柔軟性や問題解決能力が向上しました。これにより、今後起きるであろう様々な状況に対応出来る自信と力が身に付きました。
出向、転職、異業種、過酷なプロジェクトなど慣れない仕事に苦労した経験があると、うまく行かない時にも冷静さと客観性を持った仕事が出来るようになります。
昇進や役職の変化
転職後はマネジメントをする事が増え、転職前は考えられなかったような職場での役割をこなすようになりました。
マネジメント職への昇進は機会を待っていたわけではなく、職場メンバーとの交流を大事にした点、些細な事から自分のスキルを活かせる仕事を探し続けた点、前職での知見が役に立ちそうであれば積極的に発信して来た点、これらが積み上がった結果だと思います。
大きな仕事が来たチャンスでは、リスクを取ってやり切る覚悟で取り組んだ事も評価されました。
同じスキルでも職場が変わると職場や上司から期待される役割も大きく変わります。
自分のスキルをしっかり把握して貢献できる部分を見つける事で責任範囲が広がり、キャリアアップの機会が訪れます。
人的ネットワークの拡大
社内外での人脈が広がり、社外における転職者同士の交流も生まれやすくなりました。
一方で前職と転職後の仕事に繋がりが無いと、キャリアアップや業界地位向上に繋がらないとも感じています。
複数の会社を経験する事で転職前では不要だと感じていた前職・現職の会社の事を説明する機会も増え、エンジニアとしての知識だけでなく社会的な知識を求められるようになったと感じます。
モチベーションの変化
新しい職場で新しい仕事への挑戦により、新しい知識やスキル習得に対するモチベーションが高まりました。
私の場合はマネジメントスキルと英語スキル、学会で立ち回るためのスキルを多く求められるようになりました。
一方で、やはり適応に苦労する場面も多く、体調や時間管理が課題となります。
人間が気力で頑張れるのは半年から長くても1年弱で、その後は燃え尽きてしまいます。
持続性を保つには行動をルーティン化したり、自然体で取り組めるように省力化したりしていく事が重要です。
キャリア目標の再設定
転職後の経験を通じて、自分のキャリア目標を再評価し、新たな目標を設定することが一般的です。これにより、長期的なキャリアビジョンが明確になります。
会社の事業に深く関われるようになった
この点は企業規模や会社の個別特徴によるものですが、新事業を提案するハードルが全く違いました。
前職では考える事すら辞めてしまうような敵対勢力の多さでしたが、現職では新事業を生み出さないと会社が潰れるという良い認識が定着していると感じます。
転職して悪かったこと
環境の変化に苦しんだ
慣れ親しんだ環境を離れることの不安や、日々のストレスは避けられませんでした。
転職前後で体重は5キロ減り、転職後もやり切らないといけない場面では相当数の休日を仕事や勉強に費やしました。時期によっては半分以上の土日は潰れていました。
転職のリスクを知ってしまった
良くも悪くも、転職の良い可能性と共にリスクも実体験として思い知りました。
年齢が上がると転職先や転職可能な回数も限られてきますので、次に転職先を選ぶ機会があればもっと慎重になるかもしれません。
人の流動性が少ない
この点は企業規模によるものですが、中小企業は良くも悪くも人の流動性は低いです。
職場の人とうまく行かなくかった場合は、非常に辛い会社生活が永遠に続くリスクがあると感じます。
ただ、大企業でも専門性の高いエンジニアは限られた人数ですので、業界で長く活動しているエンジニアであれば大企業と中小企業で違いは少な目と言えるかもしれません。
転職後1~3年の心境の変化
最初の1年:訳が分からず仕事をこなす日々
最初に1カ月は、会議で出る単語が7割くらいわからず、重要そうな単語は会議後に調べていました。
庶務手続きも社内システムが全く違うため、何をするにも疲れていました。
1カ月~3カ月目では、新しい職場で自分が何の仕事を出来るのかを模索していました。
自分のスキルセットをあらかじめ整理できていないと迷走していたと感じます。
同時に、この時期に職場の人の出身・趣味・得意な仕事を必死に把握していました。
社外の業界ステークホルダーへの転職挨拶もこの時期に重点的に行いました。
入社後半年経った頃、いくつかの大きな仕事をやるチャンスが巡ってきました。
チャンスの要因は人の異動、自身の昇進、海外パートナーとの交渉など様々ありましたが、貪欲に手を出していきました。
英語スキルも必要となり、仕事や勉強のためにほとんどの土日が無かった記憶があります。
2年目:会社の仕事を理解してきた年
1年を過ぎると、ようやく仕事のやり方や庶務手続きがスムーズになってきました。
部署外や社外において、現職の仕事を通じた新たな人脈が出来るようになってきました。
参画するプロジェクトも増え、技術的なスキルだけでなくマネジメントスキルも向上しました。
部署の仕事が見えてくるにつれ、自分が部署の仕事をどう進化させて新しい仕事を作る事が出来るのか、ようやく考える事が出来るようになりました。
入社後は自分が出来る事を探す事しか出来ませんでしたので、やはり1年くらいは経たないと自分から職場を変えていくような仕事は難しいと実感しました。
3年目:会社事業への貢献と挑戦
3年目に入り、部署の現状を改善して行く事に対し、ようやく抵抗感や不安感が無くなりました。
仕事の役割もさらに高度化し、必要なスキルもどんどん新しく出てきています。
必要とされるスキルを習得して必死にこなしてきた仕事だけでなく、変えたい事を提案して職場や事業をより良くする仕事を期待されるようになってきました。
やりたい事に対して仲間を集めて実行する事も増えました。
新規事業に参画する機会をもらえ、事業計画についての必要な知識を得るために休日の半分くらいは本を読む日々が続きました。
これからの展望
今後数年で自分がやっている大きな仕事の成果を求められます。
その時の成果や習得スキルの性質によって、今後のキャリアも変わってくると想像しています。
ライフワークバランスという観点では転職前後で大きくは変わっていません。
年齢を重ねるにつれ仕事のペースを自分でコントロール出来るような能力が身に付いてきたので、忙しくとも体調を崩す事は減りました。
転職から3年経って感じる重要な教訓
日頃から自己分析を行う重要性
転職活動とは関係無く、普段から自分の強みや弱みを明確に理解することが重要です。オススメは3年に1回、自分の履歴書を書いてみる事です。
自分のこれまでのキャリアについて長期で普段から考えておく事で、面接でも自信を持って自己アピールができます。
短期的に考えたような自己アピールは面接官に即座に見抜かれます。
長期的な自己分析を通じて自分が本当にやりたいことや目指すべきキャリアが見えやすくなり、自分のためにも必ず役に立ちます。
転職前の準備と計画の必要性
履歴書や面接対策は当たり前の事ですが、転職時期や業界は慎重に考える必要があります。
理想的には5人以上の転職エージェントへの相談を、時期をずらして複数回行うと、自己評価だけでなく業界の浮き沈みや転職時期の良し悪しが見えてきます。
会社の窮地や部署解体など転職活動のデッドラインは突然訪れますので、ピンチになってから転職活動をすると場当たり的な決断になりがちです。
日頃から業界把握をしておかなければ、転職で成功する確率は低くなってしまいます。
楽観的になる事・資金に余裕を持つ事
転職活動は膨大なエネルギーを必要とし、精神的・肉体的疲労が非常に強いです。
事実を受け入れ楽観的に前に進む気持ちを持つ、という精神論が意外と重要です。
そのためには転職前後で1年程度は生活できる資金を確保しておくべき。
転職エージェント以外の人にも相談する
転職に正解は無く、迷いが生じます。
長期的に自分と関わっているような人がいれば、ざっくばらんに転職相談をしてみると、気持ちの整理がつくものです。
だまされたと思って、旧知の友人や先輩、先生などに連絡してみると良いでしょう。相談された方も悪い気持ちはしませんので、結果的にその人と長く付き合うきっかけになるかもしれません。
変化=チャンスと考え、成長機会を逃さない
今回の転職に限った事ではないですが、自分に到来した成長機会は無理してでも掴みに行くべきです。
私自身は20代の頃に会社のステークホルダーから声をかけられた際も、異分野への社外出向の際もかなりの無理をして掴みに行きました。
結果的にプロジェクト自体は失敗した物もありますが、成長やキャリアアップには繋がっています。
40代で起きた変化は部署解体という一見するとマイナスの変化でしたが、チャンスに変えられるかどうかは自分次第だと考えて成長機会を探る事が重要です。
20代のうちから何度か失敗しておく事で自分が限界を超えられる範囲もわかってきます。
自分の実績となるような一歩は自分から機会を掴み、多少の犠牲を払ってでも学習する意識が絶対に必要だと思います。
転職前後で読んで欲しい本
転職という大きな環境変化に伴って色々な本を読みました。
その中でも技術を問わず転職時に役に立った本を紹介しておきます。
世界のエリートがやっている 最高の休息法
脳科学について最新研究の知見に基づき、「休むこと」の本質的な重要性を説く一冊です。現代人が陥りがちな「休めない症候群」の問題点を指摘しつつ、NASA、グーグル、マイクロソフトなど世界のトップ企業が実践する休息法を紹介。
特に「頭の中の猿(邪魔な思考)を排除する方法」と「脳を休める事で生まれる人への優しさ」については多くの人に読んでもらいたいです。
ただ休むのではなく、「戦略的に休む」ことで生産性と創造性を高める、新しい休息法の指針となります。
ストーリー仕立てで登場人物が面白いため、非常に読みやすいです。私はAudible版(Amazonの音声書籍)で繰り返し聞いていました。
転職は非常に脳への刺激が強いです。この本によって常に思考が回っている状態から脱して頭を休める事が出来るようになり、睡眠や仮眠の質が上がりました。
メモの魔力 -The Magic of Memos-
「メモ」を軸とした思考法と成功哲学を伝える一冊。著者自身の起業体験と成功体験に基づく実践的なアドバイスが書かれています。単なるメモ術の本ではなく、思考を整理・強化し、目標達成への具体的なアクションを導き出すためのシステムを提示しています。
特にMECE(物事の要素を細かく分解して、問題を把握する思考法)とメモの関係性や、理想と現実のギャップを埋めるための「課題細分化」の手法は、「メモ」というタイトルからは想像も出来ない深い洞察に満ちています。
メモを取る際、つい概要をまとめようとしてしまいがちですが、メモを取りながらその場で課題細分化と自らの気付きに繋げる発想は私自身あまり持っていなかったので、大変参考になりました。
ストーリーとしての競争戦略
ビジネスの本質を「優れたストーリー」として解き明かす画期的な戦略論です。
従来の戦略フレームワークや数値分析だけでは捉えきれない「本質的差別化」の重要性を説き、Apple、Google、ユニクロ、ガリバーなど数多くの具体的な企業事例を通じて、差別化の「文脈価値」を深く掘り下げています。
特に「事業の成功は、どれだけ良いストーリーを描き、実現できるかにかかっている」という視点は、多くの経営者やビジネスパーソンに新たな気づきを与える示唆に富んだ一冊です。
書かれた内容が少し冗長ですが、それだけ難しい概念をこの本は伝えようとしています。まとめだけ読んでいてもまず間違い無く身に付かない内容だと思うので、出来るだけ書かれた具体例を理解しながら繰り返し概念をイメージして行ってください。
本が約550ページと長いため、ピンと来なかった具体例は飛ばすのも手です。
おわりに:筆者のキャリア論
変化の激しいこの時代、長く働いていると、ほぼ必ず大きな転機やピンチが訪れます。
最後に、私が20年以上エンジニアとして様々な環境で働いた上でのキャリア論5か条を参考として書いておきます。
筆者のエンジニアとしてのキャリア論 5か条
- 部署や会社は、意外と簡単に無くなる
人との繋がりは、意外と無くならない - 与えられた仕事だけで保有技術は体系化されない
仮でも適当でも良いので自分で自分を動機付けする
⇒意外と納得して頑張れるし、やりたい事が出てくる - 何も無くても5年に1回履歴書を書き、
現状把握と今後の可能性を想像する - 成長機会、チャンス、変化の種は自ら作る
ただ、突然かつ思ったのと違う形で来ることも多い
それらをどう活かせるか普段から考えておく - 全てが思い通りに進むことはあまり無い
今の環境を活かして成長する事を第一に考える
本記事では転職後3年間の心境の変化や得られた教訓について詳しくお伝えしました。
宜しければ以下、転職直後の記事から改めて読んで頂けると嬉しいです。
長い記事を読んで頂いて、ありがとうございました。
エンジニア個人はどうする?日本の技術力低下から復活するために
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この記事を書いた人 Wrote this article
kenshi2009
大企業と中小企業🏢で半分ずつ働いている40代の現役エンジニア🔧💻 この変わったキャリアで誰かの役に立ちそうなことを発信します。電気通信分野で量産開発と研究開発、ハードウェアとソフトウェア、プレイヤーとマネージャー、全て練り歩いてきました。ブログ歴も23年、奈良好き🦌 Twitterにほぼ毎日います!【SNS一覧:https://lit.link/kenshi2009】