【実体験】どっちが良い!?大企業と中小企業のエンジニア業務。築けるキャリアの違いと選び方
- 大企業エンジニアでワークライフバランスは良いけど、今後も自分のスキルが通用するのか不安💦
- 中小企業エンジニアでずっと同じ職場。大企業で働かないと自分の視野が広がらない気がする!
- 大企業は雑用や部署異動ばっかりで、集中してスキルアップできない💢
大企業エンジニア、中小企業エンジニア。
日本的な大企業のエンジニアはキャリア成長の機会が多いのか?それとも雑用が多いのか?
中業企業のエンジニアはなぜ自由で楽しそうに見えるのか?実はいつも仕事に追われているのか?
「隣の芝は青い」と言いますが、正に言葉通りの感情を持っているエンジニアが多いと思います。
筆者は20年間エンジニアとして大企業と中小企業の両方で半分ずつ働いており、現場とマネージャも両方経験しています。
若手の頃に小さな企業で数年間ベンチャー精神を味わったこともあり、4つの企業での仕事を経験しています。
そんな筆者が大企業と中小企業の違いが実際の所どうなのかを徹底比較します!!
結論から言ってしまうと、成長機会や仕事の質が異なるため、どちらが良いという正解はありません。
大企業と中小企業では、エンジニアが社会で果たすべき役割、企業から求められる仕事の質が異なります。
下記のような人に是非読んで頂きたいです。
- 大企業に居続ける事に疑問や不安を感じている人
- 大企業から他社へ転職を考えている人
- 大企業への転職を狙っている人
変化の時代、転職という選択肢が日本でも一般的になってきました。一方で転職はリスクが大きい行動なので、長期的な目線で情報を集めて自分が社会で果たしている役割を把握しておく事が重要です。
生産性に関する統計データ
生産性に関しては大企業、中堅企業、中小企業、零細企業に分けて企業規模別の生産性と給与水準を分析した統計データがあります(2024年11月のメディア記事)。
大企業ほど稼げるのは本当か? 企業規模別の生産性と平均給与
※この統計データにおける定義
零細企業: 資本金 1,000万円未満
中小企業: 資本金 1,000万円以上 1億円未満
中堅企業: 資本金 1億円以上 10億円未満
大企業 : 資本金 10億円以上
統計データの詳細
大企業は企業数では0.2%に過ぎませんが、全体の33%の付加価値を生み出し、中堅~中小企業は52%の付加価値を生み出しています。
一方で労働者1人当たりの労働生産性は大企業が高く、中小企業の約2倍です。
中小企業は労働分配率が約70%と高く、稼いだ付加価値の大部分を人件費に充てています。大企業の労働分配率は約40%で、設備投資などの余地が大きいことが特徴です。
平均給与も大企業の方が高く、大企業は638万円、中堅~中小企業は462万~369万円です(2023年の数値)。
統計データだけ見ると、大企業がお得という事になります。
大企業従業員1人1人の生産性は決して高くないはずなので、大人数で仕事のベクトルを合わせる事が生産性向上に繋がっているんでしょうね。
一方で、「やりがい」や「仕事の質」はどうなのか?
このデータを見ると「巨大な仕事を皆で細かく分業するのが効率が良い」事になるので、効率化を求めるとやりがいを感じる従業員は減りそうだなと感じます。
どんなに「統計的に良い会社」だろうとも、自分に合わなかったら意味がありません。仕事が続けられなかったり活力が得られない職場に長くいる事は絶対にオススメしません。
また、あくまで「平均値」の統計なので、企業毎のばらつきは非常に大きいです。
以降は働く側としての「やりがい」や「仕事の質」についてフォーカスして記載していきます。
大企業エンジニアと中小企業エンジニアの違い
意思決定階層(部署階層)
大企業と中小企業で最も違うのは意思決定階層です。
業種や企業規模に関係無く、1人の人間(所属長)が直接的に業務を見れる人数はだいたい決まっており、最大でも20人以下程度です。企業に所属する人数が多くなると部署階層が増えます。
部署階層が増えると、決裁のスピードが遅くなり、意思決定スピードが遅くなります。
エンジニア視点で見ると、やるべき事が見えてから行動に移せるまでのスピードが大企業では遅く、中小企業では速いです。
大企業では意思決定が遅い一方、状況把握や対策が無難に行われ、エンジニアとしては安心感があります。
中小企業は意思決定が迅速で柔軟ですが、時には不確実で経営層ですら対策方法がわからない状況に現場レベルで直面することもあります。
プロジェクト規模(事業規模)と実施目的
プロジェクト規模が大きくなり、1つのプロジェクトで使える金額の桁が違ってきます。プロジェクト数は部署や社員の数よりも、管理部門の効率観点から決まるイメージになります。ですので、1つのプロジェクト当たりの金額や人数は大手企業の方が大規模になる傾向になります。
大企業エンジニアは分業が進んでいるため専門分野に特化した作業に従事出来る一方、エンジニアとは呼べないような外注管理業務ばかりになってしまうプロジェクトも多いです。
中小企業エンジニアはプロジェクトが規模が小さく、1人または少数のエンジニアが幅広い役割を担当することが一般的です。
一方、個人のパソコンやデスク環境などに使える予算額は大企業や中小企業での差はあまり無く、企業の景気や人材への考え方で変わってきます。
プロジェクト受注内容と発注内容の質
大企業エンジニアは大規模で複雑なプロジェクトに従事し、発注者としての役割を果たすことが多いです。
プロジェクトの受注内容は詳細に精査され、堅実な計画と実行が求められます。
中小企業エンジニアは柔軟性と適応力が求められ、社外からの発注内容にも対応することが多いです。
プロジェクト受注の際には、ニーズの多様性に応える能力が重要です。
大企業が確立された企業ブランドに基づくプロジェクトの安定性を追求する一方、中小企業は新たなチャンスを捉え、多様なプロジェクトに対応する柔軟性を重視しています。
事業化を推進する企業モチベーション
これは企業によって結構異なるのであくまで傾向です。
大企業では事業化の際、とても巨大な事業ストーリーを作る必要があります。前例がある既存のビジネスモデルを拡大・改善し、競争力を維持しようとします。
そのためスモールスタートができない大企業は多いです。
新しいことを自分で始めるより外部から結果を持ってきた方が評価されてしまいがちです。
中小企業は新たな分野やアイデアにより市場での存在感を高め、成長を促進しようとします。
事業化は、独自性を打ち出すための手段となります。
エンジニアにとって、自分の技術をそのまま事業化したいと思うのならば中小企業が良いでしょう。
求められる成果の質
大企業と中小企業のエンジニアは、達成すべき成果の質が異なります。
大企業では企業ブランドを重視するため、企業ブランドに即し、かつ社会にインパクトのある成果を出す事が評価されます。
逆に商品を売るには多数のハードルがあり関わる人数も膨大となるので、エンジニアが自分の技術で商品が売れたと実感できるような仕事は滅多に無いです。
中業企業では売り上げに繋がる独自性を打ち出せる成果が評価されます。
エンジニアが自分の技術で稼ぐ実感が得られる一方、いくら社会の為になろうと売れる成果でないと評価されにくいです。
担当業務の幅と量
大企業では部署としての担当が管理されており、大企業の1部署が担う担当範囲は狭いです。
優秀かどうかではなく、重複していない事、企業戦略に沿っている事が部署の存続条件となり得ます。
大企業エンジニアは専門化され、狭い分野に特化した業務を担当します。聞こえは良いですが、狭すぎて他社で通用しなくなりがちです。
中小企業エンジニアは幅広い業務を担当するため多様なスキルが必要です。
中小企業は部署内の誰かがやっていない事をやれば喜ばれますが、大企業は他にやっている部署があると重複と見なされます。
言い換えると中小企業は誰もスキルを持っていない事は諦めるか誰かが兼任しますが、大企業は大人数をかけてでも事業を進めるためのスキルは全て揃っていると説明できるような体制を作ろうとします。
社外の人からの扱われ方
大企業は社会の規範としてあらゆる側面から良く見えている必要があります。社会の規範になっていないと、国や産業界を変えるような大きなプロジェクトが取れないからです。
この点は会社の業績が良い時期は利点となるのですが、良くない時期は内部にいる従業員から見ると色々な無理が生じてきます。
大企業エンジニアは企業ブランドや信頼性によって、社外からの評価が高まりがちです。企業ブランドが強いあまり、エンジニア個人としての実力が自分でもわかりづらくなってしまいます。
中小企業のエンジニアは、個人の貢献が評価に繋がりやすい傾向があります。学術界等でも中小企業は個人の活動が際立っている事が多いです。
学習コンテンツ・キャリアの方向性
大企業が従業員に新しいことを学習させる際、社内研修や外部講師には大きなお金をかけるので自腹でセミナー等に参加しなくても大抵やっていけます。裏を返すと、会社が勧めてきたトレンドに沿った研修を受けるだけの人が増えがちです。
大企業エンジニアはキャリア成長のための機会が多いですが、会社の事業に沿ったスキル取得が求められます。
求められるスキルは短期で変わる事も多く、エンジニア個人のキャリアを会社は考えずにリスキリングを強要されることがあります。
中小企業では個人のスキルが重視されるため、エンジニアが自ら強いスキルを習得することが求められます。
中小企業でも会社はエンジニア個人のキャリアは考えてくれませんが、大企業と違いリスキリングをさせる企業体力が無いので良くも悪くも個人がある程度コントロールできます。
セカンドキャリアの方向性
これは主に40代以降のエンジニアで出てくる違いです。
大企業のシニアエンジニアは企業に在籍しながら国の省庁、標準化団体、業界の規格管理団体などへ出向・兼任していることが多いです。
これは業界のおいて長く社会貢献してきた企業ブランドとエンジニア個人の使命感を買われている証であり、天下りとは大きく質が異なります。
大企業では各種団体への人材輩出が常に一定数行われているのでチャンスが多いですが、中小企業ではエンジニア個人の力で開拓する必要があり、チャンスは稀だと思った方が良いです。
企業の枠を超えた社会貢献活動としてセカンドキャリアを歩む道は、大企業の方が向いています。
雑務の量
大企業ではイレギュラーな事をして問題が起きると再発防止取り組みを求められます。社内システムは、こういった再発防止策や多数の部署全ての要件に対応するため記入欄やステップが膨れ上がっていることが多いです。
各種申請において何のことかわからない記入欄も全て埋める無駄なノウハウが必要になります。
大企業エンジニアはプロジェクトの厳格管理と規模の大きさから、発注や各種申請に伴う雑務の量が増加します。
企業倫理の研修も多く、週のうち半分以上は無駄な雑務をやっていたなと思う事も多いです。
中業企業エンジニアは各種申請が簡素なため雑務量は少ないですが、継続的な進捗が求められます。
イメージですが、大企業は全業務時間の6~7割は雑務、中小企業は3~4割です。
大企業エンジニアと中小企業エンジニアで変わらない点
ワークライフバランス
「大企業はワークライフバランスが良い!」と書いてあるブログ記事が本当に多いですが、それは10年以上前の幻想です。
確かに今も休日日数は大企業の方が多い傾向にあります。
しかし、残業時間や休日の拘束については大企業も中小企業も変わりません。
大企業でも休日に仕事をしている人はたくさんいます。
どちらの企業でも現代の日本はワークライフバランスは自分次第で確保可能!
昔はITエンジニアと言えば大企業による下請けの中小企業への圧力・搾取が横行していましたが、現代ではそのような実態はほぼ無いと思って良いです。
仮にITエンジニアで毎日深夜帰りで休日返上も強制される現場でしたら、迷わず転職先を探せば良い会社が見つかると断言できます。
学会での扱われ方
学会では基本的に活動者個人が評価されます。
もちろん仕事をもらう関係上で意識することはありますが、学会の議論で所属企業はそこまで強く意識しません。
1人の個人として学会でエンジニアスキルをアピールするという点では、大企業と中小企業の差は小さいです。
大企業でも中小企業でも所属部署が何の事業をしているかは重要で、学会活動のモチベーションを理解してもらえないと相手にされない可能性があります。
自分の給与
この記事の最初に書いた通り、統計的な平均給与は大企業の方が高いです。
ですが自分の給与は企業の規模ではなく、業界や仕事の質、自分への会社の評価によって大きく左右されます。
良く話題になる半導体業界や建築業界など、その時の業界全体の勢いによって仕事の需要は変化し、給与も変わります。
仕事の質は、当然ですが解決する課題が上流工程である程、需要に対して競合が少ない仕事である程、給与が高い傾向があります。
現代では、エンジニアとしての自分の給与は企業の所属人数で決まるわけではありません。
中小企業は給料が低い!と思い込んでいる要因は、下流工程(単純なソフトウェア開発作業など)の企業ばかりを見ているためです。
エンジニアとしてスキルアップするには?
学会や勉強会などフェアな場に行く
学会、展示会、勉強会など技術をフェアに感じられる場に行く事で、エンジニアとしての自身の価値を判断する感覚が養われます。
自分のスキルが以外な業界で役に立つ事を発見できるかもしれません。
自分にどんなスキルがプラスされれば強いかも判断しやすくなります。
SNSで業界人と交流する
理由は上記の学会や勉強会と同じです。
SNSで業界の活動を知ったり、有名人と直接交流することもできます。
注意点として、SNSでは相手の良い面・悪い面が際立って見えてしまう傾向にあるため、過敏に反応するのではなく雰囲気を感じる程度に留めるのが良いです。
20代のスキルアップについて
20代の間はシンプルに何をしたいかで仕事を選び、5年程度は頑張ってもう一度、どうしたいか考えるのが良いです。
今の時代、30代で転職する事は十分可能です。新卒時点で「この会社が楽そうだから定年まで勤める!」という目的で会社を選ぶのは、リスクでしかありません。
自分が制御できない会社側の理由でそれが無くなるリスクがあるためです。
20代の人が60代になる、40年後の世界を予測できる人は誰もいません。
30代、40代、50代以降のスキルアップ
年代が上がってくると、エンジニアの個人スキルよりも人脈が重視されるようになってきます。
エンジニアから突如マネージャーとしてのスキルを求められる人も一定数います。
「昔と比べ、必要とされるスキルが変わりすぎてついていけない!」と思っている方が多いかもしれません。
今の時代は、学び直しが楽になりました。業界のプロが無料の学習コンテンツを公開してくれている時代です。
20代と同じく、5年に1回は自分のスキルを見つめ直す事がオススメです。
自身が持つ人脈の強みと、マネージャーへの適正も含めて見つめ直すのが良いです。
学び続けておくのが大事
やろうと思えば何でも始められる時代では、熟考してから大きく行動するより、少し手を出して体験してから考える方が効率が良いです。自分の強みが無いのなら、尚更早く行動してスキルの種を多く持っておくべきです。
既に強みがあるのなら、自分のスキルをどの方向へ育てていくか、長期的なプランを考えながら強みを磨き続けておきましょう。長期的な目線で強みを育て続けておけば、会社の組織再編で自分のスキルを捨てるような選択を迫られた時、自分で納得の行く選択をできる可能性が高まります。
自分で学習する方法
現代の学習方法は色々ありますが、手軽に始める場合、下記のようなタイプに分けられると思います。
- 書籍:Amazon(専門書で検索)などネット書店のお陰であらゆる専門書がすぐに買える
- 無料Web:基礎的な内容ならYoutube動画でほとんどの業界をカバーできる
- 有料Web:Udemy等の動画視聴タイプや、Tech Camp等の集中講座タイプがある
1つの例ですが、私は下記のような使い分けをしています。
・全く知らない分野は生成AIやYoutubeでキーワードやトレンドを知る
・詳しく勉強する時は生成AIやYoutubeで得たキーワード等を使ってAmazon(専門書で検索)で定評のある書籍を探す
⇒文字が好きな人なら書籍、動画が好きならUdemy等の有料Webで、好みで選ぶ
まとめ:状況を把握し、無理なく継続スキルアップ
今回の記事では大企業エンジニアと中小企業エンジニアの仕事の違いを書かせて頂きました。
大企業と中小企業では、エンジニアが社会で果たすべき役割、企業から求められる仕事の質が異なります。
本文で述べたエンジニア業務の違いを表にまとめました。
項目 | 大企業 | 中小企業 |
---|---|---|
意思決定 | 遅い | 速い |
プロジェクト規模 | 大きい | 小さい |
成果の質 | 企業ブランド | 売上貢献 |
担当業務 | 狭い | 広い |
キャリアの方向性 | 強制・翻弄されがち | 自由度がある |
セカンドキャリア | 過去実績がある | 自ら開拓 |
雑務量 | 多い | 少ない |
どちらにしろ、40年も継続が約束された職場は絶対にありません。
下記のような活動を無理なく続けていく事が社会を生き抜くコツです。
- 定期的に自分を振り返り
- 今は役に立たなくても人脈は大事にする
- 学会や勉強会などフェアな場で交流しエンジニアとしての感覚を養う
- 手軽な学習コンテンツで無理なく学び続ける
とても長い文章になってしまいましたが、最後まで読んで頂いてありがとうございましたm(_ _)m
おわり。
エンジニアではなく一般的な大企業と中小企業の違いについては下記に詳しく記載しています!
大企業の転職事情については下記の記事に詳しく書いてありますので、そちらも是非お読みください!
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この記事を書いた人 Wrote this article
kenshi2009
大企業と中小企業🏢で半分ずつ働いている40代の現役エンジニア🔧💻 この変わったキャリアで誰かの役に立ちそうなことを発信します。電気通信分野で量産開発と研究開発、ハードウェアとソフトウェア、プレイヤーとマネージャー、全て練り歩いてきました。ブログ歴も23年、奈良好き🦌 Twitterにほぼ毎日います!【SNS一覧:https://lit.link/kenshi2009】